写真はその性質上、過去を映し出すものであり、無限のめまぐるしい現在において過去を描きます。この展示にある写真は、今では入手不可能なエクタクローム赤外線感光フィルム(EIR)で25年前に撮影されたものです。赤外線は電磁スペクトルの中間で長波と短波の間に位置し、光よりも波長が長いものの、肉眼では見えません。振り返ると、これらの「偽」色写真は、90年代の終わり頃、北ロンドン・フィンズベリーパークにある肉屋の上のフラットに住んでいた時の奇妙な一年を思い出させます。フラットの裏庭には古い肉の骨が常に散らばっていて近所の犬たちが屯している、そんな場所でした。そこから少し歩いたところに、「レインボー・シアター」という劇場がありました。アールデコ建築の建物で、1930年に「趣のある映画館」としてオープンしましたが、その後の数十年で、エラ・フィッツジェラルドやマイルス・デイヴィス・カルテット、嫉妬した恋人に突き落とされたフランク・ザッパ、ジギー・スターダストとしてのデヴィッド・ボウイ、ピンク・フロイドと共演したソフト・マシーン、そしてパブリック・イメージ・リミテッドの初期のライブなどで知られるようになりました。そんな騒がしくて独特な雰囲気が、少しは私に染みついたのかもしれません。写真は、玄関の外に広がる世界への無垢で大胆な好奇心を表現しています。私の部屋の窓の外の通りでは、ギャング同士が衝突し、さまざまな言語の声が混ざり合っていました。男たちがプラスチック製のガーデンチェアを振りかざして追いかけ合う、滑稽な光景が見られることもありましたが、時にナイフが出てきたりするとすぐに辺りの雰囲気は不穏な空気に一変しました。夜になると、通りは死のような静けさに包まれ、この夜に撮影された写真には不吉な予感が刻まれています。それぞれ明確な形のないどの写真も、その外の雰囲気に触発されて自ら制作したオブジェクトに焦点を当てて撮影しています。断熱フォームと車のボディフィラーを使用し、鮮やかな白色で仕上げたあと、数本の釣り糸で天井から吊り下げ宙に浮かべ、アクリルで包んでスライドプロジェクターの光を散らした”生(Raw)”をイメージした形状です。しかし写真の仕上がりは少なくとも予測も制御も不可能でした。午前2時、ポケットの中でフィルムが燃えるような思いでフードをかぶり、最寄りのバス停まで駆け出し、深夜バスに乗ってソーホーの24時間営業の写真ラボへ向かいました。数時間後、現像の結果を見つめながら、「これらの写真がどこから来て何を意味するのか」を考え、今でも同じ問いを自分に投げかけています。私はあの頃の出来事を誇張しているのか?それとも、肉屋の上で撮影された偽色の写真は、その制作過程の中で正と誤を暴露し、私がこれまで撮った中で最も正直な写真なのだろうか?
Stuart Munro 「Raw cuts」
Alternative Space The White (Room #202)
2024年12月3日(火)〜12月21日(土)
